NFT(非代替性トークン)開発をする際に、先に考えておきたいポイント3点

2022年8月

「NFT」 (NON-FUNGIBLE TOKEN:非代替性トークン)という新たな認証技術を使ったデジタルアイテムが高額で売買され話題※になっています。

「自社でも NFT を活用したサービスをしたい!」と NFT 開発に興味がある方も多いのではないでしょうか。

しかし、NFT 開発をするにも何から手を付けていいのかわからないと迷ってしまう方も多いと思います。

そこで今回は、NFT 開発に携わった経験から見えてきた「NFT 開発をする際に事前に考えておきたいポイント」を紹介します。基礎的なところから解説しいているので、NFTビジネスを検討する際の参考にしてください。

弊社のNFT開発実績やコンサルティングサービスについては、こちらをご覧ください。


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・NFTゲームの特徴とサービス紹介

※米ツイッターの創業者であるジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)が 2006 年 3 月 21 日に投稿した初ツイートが 22 日、約 291 万ドル(約 3 億 1 千万円)で落札された。

日本経済新聞/「Twitter 創業者ドーシーCEO の初投稿、3 億円で落札」(2021.3.24)

おさらい:NFT とは?
NFT (NON-FUNGIBLE TOKEN) とは、ブロックチェーン上で発行された、代替不能な(同じものは存在しない)トークンのことです。この NFT を使うことで、ユニークな(唯一の)オリジナルのデジタルアイテムであることを表すことができます。

デジタルファイルの特性として、コピーが容易に可能で、データがオリジナル(原本、コピーデータのもととなるもの)であることを証明する手段がありませんでした。

これに対し NFT を使うことで、デジタルアイテムが「ユニーク」であることの鑑定書や証明書をつけることができるようになります。アート、オーディオ、ビデオ、ゲーム内でのイテム、トレーディングカード等を NFT 化し売買するサービスが登場しています。

「NFT開発をする際に事前に考えておきたいポイント」は、
1:NFTの販売方法を検討する
2:マーケットプレイスを選定する
3:NFTチェーンを選定する
の3点です。

順に解説していきます。

NFT開発をする際に、先に考えておきたいポイント3点と、その回答例

NFT開発をする際に、先に考えておきたいポイント3点と、その回答例

ポイント1:NFTの販売方法

NFT を使ったビジネスを検討する際、まず初めに、NFT の販売方法を検討しましょう。

販売方法は大きく 2 つあります。

  • 自社の NFT のマーケットプレイスを開発する方法
  • 既存のマーケットプレイスを利用する方法

※NFT を売買するプラットフォームのこと「マーケットプレイス」と呼びます。

それぞれのメリット、デメリットの一例を紹介します。

自社マーケットプレイス 既存マーケットプレイス
メリット ・取り扱いコンテンツ、手数料、決済手段などのルールを自由にコントロールできる。
・NFT 売買手数料収入が得られる。
・会員登録や利用開始準備をするだけでよい。
・自社 NFT アイテムの開発・販売に注力することができる。
・マーケットプレイス利用者(出品者・購入者)の獲得をしなくてよい。
デメリット ・NFT の法規制が国ごとに異なるため、展開先地域に応じた対応が必要。
・利用者および NFT を守るセキュリティ対策が必要
・マーケットプレイス利用者(出品者・購入者)の獲得が必要
・決済に利用可能な暗号資産や日本円の対応有無、販売地域などは、マーケットプレイスのルールに従う。

ポイント2:どのマーケットを選ぶか?

次に、既存のマーケットプレイスを利用する方法に決まった場合を例に挙げて解説を続けます。どの NFT マーケットプレイスを利用するかを検討しましょう。NFT マーケットプレイスは、扱う NFT アイテムのジャンルや、展開地域(国内/海外)により、多種多様あります。実は、国内のマーケットプレイスだけでも 40 以上あるといわれています。

いくつか代表的な NFT マーケットプレイスを取り上げ、その特徴を紹介します。

NFT マーケットプレイス比較表

マーケットプレイス名 OpenSea FTX Japan Adam byGMO Coincheck NFT(β版)
読み方 オープンシー エフティエックスジャパン アダム コインチェック エヌエフティ
運営会社 Ozone Networks Inc. FTX Japan 株式会社 GMOアダム株式会社 (GMO Adam, Inc.) コインチェック株式会社 (Coincheck, Inc.)
取引高 442,83M ドル
対応 chain Ethereum、Polygon、Klatyn、Solana FTXToken(FTT)、Solana、Ethereum Ethereum Ethereum
決済可能
通貨数
4 種 暗号通貨のみ 法定通貨:11 種
暗号通貨:132 種類
法定通貨:1 種
暗号通貨:1 種
暗号通貨:16種
決済可能
通貨
暗号通貨>
ETH/WETH,SOL,US
DC,DAI
法定通貨>
日本円
(銀行振込)
USD,EUR,GBP,AUD
暗号通貨>
BTC,ETH,SOL,XR
P など
法定通貨>
日本円
(クレジットカード・銀行振込)
暗号通貨>
ETH
暗号通貨>
BTC, ETH, MONA, LSK, XRP, XEM
など
HP https://opensea.io/ https://www.liquid.com/ja/ https://adam.jp https://nft.coincheck.com/

※各社公式サイト情報より作成・編集。なお取引高は DappRadar の Volume:30D より作成。

OpenSea(オープンシー)

OpenSea

世界最大級の取引高を誇る NFT マーケットプレイスで、NFT マーケットのシェア 8 割以上とも言われています。サービス展開地域も多く、OpenSea を利用することで、ほぼ全世界に NFT アイテムを販売することができます。取り扱いジャンルもアート、音楽、仮想空間、ドメインなど多岐にわたっています。

しかし、日本国内を中心とした NFT ビジネスを検討している場合、マーケットプレイスが日本語対応していない点、決済手段は、暗号資産のみであり、円やクレジットカードによる購入は出来ない点がデメリットと言えます。

OpenSea Toppage
OpenSea の TOP ページ。
CryptoPunks の NFT 販売ページ。
CryptoPunks の NFT 販売ページ。

CryptoPunks は、Ethereum ブロックチェーン上の最初のピクセルアート NFT。最も高価なものは数百万ドルの価値があるといわれている。

公式サイト OpenSea

続けて、日本語対応・円やクレジットカード対応の NFT マーケットプレイスを紹介します。

FTX Japan(エフティエックスジャパン)

FTX JP

FTXJP は、世界大手の仮想通貨取引所 FTX が提供する、日本の規制に準拠したマーケットで、2022 年 6 月にローンチされました。日本円で決済できることに加え、決済できる暗号通貨の種類が豊富な事も特徴です。日本国内で「SOL(ソラナ)」を取り扱っています。また、国内初のパーペチュアル取引を行えるマーケットでもあります。

公式サイトにアクセスすると、デフォルトが英語表記ですが、言語設定の変更から日本語化が出来るようになっています。また、ヘルプサイトは充実しているので、使用には問題ありません。

NFT Japan の TOP ページ。
NFT Japan の TOP ページ。

右上の マークから言語設定変更ができる。
画像中断の「Trade」部分、日本円で SOL が買えるのは NFT Japan のみ。(投稿時点)

NFT Japanのhelpページ。
NFT Japanのhelpページ。

こちらは、言語設定変更しなくとも日本語表示。

Adam by GMO(アダム バイ ジーエムオー)

Adam by GMO

その名の通り、日本のGMOグループの子会社が運営しているNFTマーケットプレイスです。NFTマーケットプレイス内は、全て日本語です。また、暗号資産での決済に加え、クレジットカード・口座振り込みにも対応しています。取り扱いジャンルは、アート、音楽、映像などが中心です。

一方で、NFTコンテンツの販売には承認が必要で、一般の方がマーケットプレイスへ出品することは出来ません。(マーケットで購入したNFTコンテンツの二次販売のみ可能)。

Adam by GMOのTOPページ。
Adam by GMOのTOPページ。

日本国内アーティストの作品が多くならんでいる。バーナー中央は、全世界で累計1,500万部以上売り上げているワイン漫画『神の雫』、初のNFTのもの。

坂本龍一さんNFT販売ページ。
坂本龍一さんNFT販売ページ。

「Merry Christmas Mr. Lawrence」の音源の右手のメロディー 595音を1音ずつ分割し、NFT 化し販売している。

公式サイト Adam by GMO

Coincheck NFT(β版)(コインチェック エヌエフティ)

Coincheck NFT

暗号資産取引所「Coincheck」内に併設された国内初のNFTマーケットプレイスです。。暗号資産取引所が運営していることもあり、既にCoincheckで取り扱いのある暗号通貨での決済が可能です。NFTマーケットプレイス内は、全て日本語です。利用するには、まずCoincheckへのアカウント登録、口座開設が必要になります。既にCoincheckのアカウント開設済みの方は、ウォレット(MetaMask)を連携するだけで、簡単に利用開始できます。

Coincheck NFT内での出品/購入に関しては、ネットワーク手数料(Gas代)は無料です。これは、マーケットプレイス内の取引をブロックチェーンに記録されないオフチェーン取引としているためです。取り扱いジャンルは、ゲーム、アート、スポーツ、NFTトレーニングカードなどが中心です。

Coincheck NFTのTOPページ。
Coincheck NFTのTOPページ。

アイドルのNFTトレーディングカード(画像中段左端)や、ゲーム「The sandbox」の土地(画像中段左から2個目)を売買することができる。

ポイント3:NFTチェーンの選定。どのブロックチェーンにNFTをつくるか?

NFTをどのブロックチェーンを使って取引するかを検討しましょう。この検討に欠かせない観点が「ガス代(gas price/gas fee)」です。ガス代とは、NFTの売買・送金・仮想通貨同士の両替時などの手数料のことで、ブロックチェーンの種類やトランザクションの数、取引時間帯によっても発生するガス代は異なってきます。

ガス代は、取引需要により上下しており、特にブロックチェーンの中でもトランザクション数が多いEthereumでは、ガス代の高騰が大きな問題となっており、NFTアイテムの価格よりガス代の方が高い事さえあります。

Ethereumのガス代を節約する方法には、ガス代が安い時間帯を狙うことや、Ethereum以外のブロックチェーンにNFTを発行する方法があります。

Ethereum以外のブロックチェーンを紹介します。

ガス代はなぜ必要なのか?
NFTの根本技術であるブロックチェーンは、中央管理者がいない状態でブロックチェーン上に取引履歴を記録していく仕組みです。中央管理者がいないため、第三者がその取引が行われた事実を承認し、ブロックチェーンに書き込みをしなければなりません。この際に必要な承認・計算処理を「マイニング(Mining)」といい、このマイニングをする人たち(個人や団体、企業など)を「マイナー」と呼びます。マイニングには、膨大な計算能力が必要であり、彼らに払う報酬として、ガス代がかかります。

また、ガス代を設定することで、需要過多でネットワークの負荷がキャパシティーを超えないよう取引を抑制する目的や、悪意ある者が攻撃するには、コストがかかり過ぎるようにすることでセキュリティ対策しての側面もあります。

NFTチェーン比較表

Ethereum Polygon Solana BNB Chain
読み方 イーサリアム ポリゴン ソラナ ビルドアンドビルド
チェーン
独自通貨 ETH MATIC SOL BNB
ガス代 $1.98 $0.00139 $0.00025 $0.02824
開発言語 Solidity、Vyper Solidity、Vyper Rust、C、C++ Solidity
有名なプロジェクト CryptoKitties,
CryptoPunks
PRADA、
アディダスの
NFTプロジェクト、
Degenerate Ape Academy,
STEPN
Axie Infitity,
STEPN
NFT
取引量
$28,801M $449M $2,481M $148M
ユーザ数(walllet数) 71M 390K:MaticWallet 1.2M:Phantom(MAU) 5M:Trust Wallet(AU)
対応
マーケットプレイス
OpenSea,Binance, OKX, BingX, Bybit
など
OpenSea, Element Market,Binance,Gate.io,Bybit
など
OpenSea,Binance, OKX, BingX, BitCoke
など
国内取引所:FTXJapanのみ
BitKeep NFT Marketplace
など
マーケットプレイスの想定売上 OpenSea($392,03M) Element Market($245,2M) OpenSea($44.66M) BitKeep NFT Marketplace(15,48)

※各社公式サイト情報、DappRadar、CryptoslamCoinToolより作成。記載情報は2022年7月執筆時点のものです。

Polygon(ポリゴン)

Polygon(ポリゴン)

Polygon(ポリゴン)は、Ethereumの手数料高騰や取引過多による処理遅延を解決するために2017年からスタートしたプロジェクトで、Ethereumネットワークのセカンドレイヤー上に構築されています。Ethereumのスマートコントラクト記述言語Solidityをそのまま利用できるため、開発者やアプリケーションが利用しやすいという特徴があります。まず安価にNFTに触れてみたい、その後Ethereumでの展開もしたいという方には、オススメです。

Ethereumと比較すると、取引処理のスピードが速く、Polygon のアクティブユーザー数がEthereumを超えたとのニュースもあります。Polygonの独自トークンはMATIC(マティック)といい、日本国内取引所での取り扱いがないため、海外の仮想通貨取引所の口座が必要になります。

公式サイト Polygon

Solana(ソラナ)

Solana(ソラナ)

Solanaとは、レイヤー1のブロックチェーンで、独自トークンはSOL(ソル)といいます。2020年3月のサービス開始と比較的新しいものですが、Solanaは、業界最速レベルの取引処理スピードを誇っており、秒間5万トランザクション(TPS)、平均ブロックタイム600ミリ秒を記録しています。

また、Solanaにはブロックチェーン間で相互運用できる機能があり、既に360以上ものプロジェクトと連携し、その基盤を支えています。Ethereumのブロックチェーンに取って代わるのではないか?とも言われています。

国内取引所ではFTXJPが取り扱いしています。

Solanaが利用されているプロジェクトの一覧
Solanaが利用されているプロジェクトの一覧

公式サイト Solana

Build and Build Chain(BNB Chain:ビルドアンドビルドチェーン)

Build and Build Chain(BNB Chain:ビルドアンドビルドチェーン)

最大暗号資産取引所Binanceが2019年に構築した独立したブロックチェーンで、2022年2月にBinance Smart Chain とBinance Chainが BNB Chainに改名したものです。

Ethereumを比較すると、BNB Chainの方がより高速で安価な取引が可能で、秒間39.2トランザクション(TPS)、平均ブロックタイム3.0秒を記録しています。Ethereumとの互換性があり、Ethereum上で開発されているプロジェクトなどをBNB Chainに移行することもできます。

フィリピンを中心とした東南アジアで大人気のNFTゲーム Axie Infinity(アクシーインフィニティ)でもBNB Chainが採用されています。

日本国内取引所での取り扱いがないため、海外の仮想通貨取引所の口座が必要になります。

NFT(非代替性トークン)開発をする際に、先に考えておきたいポイント3点は、
1:NFTの販売方法を検討する
2:マーケットプレイス選定する
3:NFTチェーンを選定する
でした。

弊社では、NFTを活用したサービスのコンサルティング、開発サポートを展開しております。より詳しい情報については、こちらをご覧ください。