ブロックチェーン技術の「NFT」 (NON-FUNGIBLE TOKEN:非代替性トークン)を使ったサービスが登場しています。

弊社にも「NFTを商品購入のおまけ・ノベルティとして配りたい」とのご相談をいただきます。NFTは、発行・提供のされ方や利用方法、他のトークン等との交換できるか等により、考慮すべき法律や規制が異なります。物理的な「おまけ」を渡す時と同じ要領でNFTの配布・提供サービスを開始してしまうと、法律違反になり最悪の場合は金融庁から警告等を受ける可能性もあります。

そこで今回は、前半でサービスを提供する際に考慮すべき法律について4つ解説します。

※この記事の内容は個人の見解です。実際にサービスを提供する際は、弁護士事務所等にご相談ください。

注意すべき法的観点4つ

NFTは、発行・提供のされ方や利用方法等により、考慮すべき法律や規制が異なります。今回は、注意すべき観点を簡単に4つ紹介します。

表1  NFTサービスに関する注意すべき法的観点

No 注意すべき観点 該当する可能性がある
サービス内容
該当法令
1 賭博に該当する可能性 ・NFTガチャ
(ランダムくじ)
・対戦勝敗、ランキング等によるNFTアイテム配布
賭博罪
(刑法185条、第186条)
2 景品表示法の考慮 高額な景品類の配布 景品表示法
3 NFTで得られた利益の再配布 NFTアイテムを集団所有し、保有者に利益を再配分する 金融商品取引法
4 暗号資産に該当する可能性 ・独自NFT(固有トークン)の発行
・独自NFTに決済手段等の経済的機能を持たせる
・NFTアイテムの発行
資金決済法

出典:日本暗号資産ビジネス協会「NFTビジネスに関するガイドライン」、金融庁HP「暗号資産に関連する事業を行うみなさまへ」をもとに筆者作成。

1:賭博に該当する可能性

ソーシャルゲームで行われる「ガチャ(ランダムくじ)」の方法や、ゲーム勝敗のインセンティブとして、NFTアイテムを配布すると「賭博」に該当する可能性があります。

賭博罪(刑法第185条、第186条)は、以下の4つすべて満たす場合と解釈されています。
① 偶然の勝敗により
② 財産上の利益の
③ 得喪を争うこと
④ 失われ得る財産上の利益が一時の娯楽に供するものでないこと

※出典:日本暗号資産ビジネス協会「NFTビジネスに関するガイドライン

どういった場合が該当するのか、順に確認していきます。

①偶然の勝敗により
「ガチャ」、「ゲームの勝敗」などが該当します。

②財産上の利益
NFTは、当該サービスの終了後も財産的価値を有し、NFT発行サービス外のNFTプラットフォームで流通できる場合があるため、財産上の利益に該当すると考えられます。

③得喪を争う
NFTアイテムを購入する際、購入者は、必ず購入額よりも価値があるものを手にできるかは不明で、損(喪)をするか・得をするのかわかりません。この場合、NFTアイテムの販売者と購入者は財産上の利益の得喪を争う関係に該当すると考えられます。

④ 失われ得る財産上の利益が一時の娯楽に供するものでないこと
これまでの判例によると、飲食物・菓子、即時に消費するする飲食物の代金などは、賭博罪の成立が否定(④に該当しない)されています。
NFTアイテムは、当該サービス終了後も財産的価値を有するため、該当すると考えられます。

ガチャ形式は①に該当し、NFTの特性上④への該当は避けられません。このため、違法性を避けるには②と③への対処が必要になります。

対処のアイディア

サービス提供者(販売者)と購入者との間で、財産上の利益の得喪を争う関係にしない=「購入者は、購入金額相当のNFTアイテムを獲得する」設定にする。

例えば、「福袋」の場合は、福袋の購入額<福袋の中身の市場価値となっている=購入者は「損」がないことから、賭博には該当しないと考えられています。この考え方を応用することで、対応できる可能性があります。

しかしながら、法解釈についても様々な意見があり、サービス内容次第で該当する可能性があるため、専門家も交え慎重に検討を行ってください。

参考:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会の見解
②・③に該当しない範囲について、一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会の「NFTビジネスに関するガイドライン」の見解は以下の通りです。

“特に留意を要するケースとして、パッケージ販売やガチャの手法を用いてNFTを販売する場合、こうした手法ではNFTの獲得に偶然性があるのが通常であることを考慮しますと、販売者と購入者との間や購入者と他の購入者との間で財産上の利益の得喪を争う関係(②・③)が認められるかを検討すべきこととなります。その判断のためには、サービス形態に応じた個別具体的な検討が必要ですが、例えば、販売者は自らが設定した販売価格に相当する対価の支払いを受けることとなりますので、購入者において、その販売価格に応じたNFTを獲得していると評価できる事情があれば、当該サービスは購入者が販売者との間で財産上の利益の得喪を争うものではないと整理しうると考えられます。”

出典:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会.「NFTビジネスに関するガイドライン」4-2-2.NFTを利用したゲームについて より

2:景品表示法の考慮

過大な景品類(おまけ)による誘引は、景品表示法※により禁止されています。景品類は、提供の仕方(懸賞の方法)により最高額が設定されており、最高額を超えた場合規制対象となります。例えば、オンラインゲームのログインボーナスの場合は「総付懸賞」に、ゲーム成績によるプレゼントは「一般懸賞」に該当します。懸賞の種類とその景品上限額は以下の通りです。

表2 景品表示法に基づく景品規制3種類の概要と限度額

総付景品 共同懸賞 一般懸賞
概要 「懸賞」によらず、利用者・来場者全員に提供される景品類 複数の事業者共同で行う懸賞 共同懸賞以外の懸賞
・来店プレゼント
(先着順等も含む)
・ログインボーナス
・商店街(ショッピングモール)等の複数店舗が共同で実施する抽選会 ・店頭抽選会
・競技結果順によるプレゼント
景品類上限額
懸賞による取引価額 1,000円未満:200円 取引価額にかかわらず30万円 5000円未満:取引価額の20倍
1,000円以上:取引価額の10分の2 5,000円以上:10万円
総額 懸賞に係る売上予定総額の3% 懸賞に係る売上予定総額の2%

出典:「景品規制の概要」消費者庁をもとに作成。

対処のアイディア

おまけは、景品類上限額以内のものにする。

しかしながら、上限額の検討条件である「懸賞による取引価格」をどの範囲と考えるか?が複数考えられるという点があります。

オンラインゲームの例では「懸賞による取引価格」を
-これまでの総課金額で判断する
-懸賞キャンペーン期間内の総課金額で判断する
-懸賞キャンペーン対象商品への課金額で判断する など

一方で、NFTアイテムによる取引付随性が排除される場合には、景品類に該当しない可能性もあります。

参考:景品表示法の補足説明
景品表示法には、過大な景品類の他に「不正な表示」も禁止されています。「不正な表示」とは、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」の2つで、広告・宣伝時に、自社商品やサービスを実態よりも不当に良く/安く見せることなどが該当します。今回は記載を割愛します。詳しくは消費者庁HPをご覧ください。

3:NFTで得られた利益の再配布:有価証券に該当する可能性

NFTの保有により、NFT発行体等の収益の一部がNFT保有者に再配布されるスキームの場合、NFTが金融商品取引法上の「有価証券(電子記録移転権利等)」に該当する可能性があります。

例えば、NFTオンラインゲーム内の土地や施設・アイテムなどをユーザが所有(NFT保有)出来るようになっており、他のユーザが土地や施設・アイテムを利用する際の課金額の一部を収益として取る場合が該当します。

NFT電子記録移転権利に該当した場合、金融商品取引業の登録が必要になります。なお、既に金融商品取引業の資格があっても、電子記録移転権利を追加で扱う場合も変更登録が必要です。

これらに加えて、サービス運営会社の国籍によって該当条件が変更となることがあり判断が非常に複雑で、本記事内での記載が難しい状況です。弊社では、日本の他、アメリカ等でのNFTサービス開発の経験もございますので、詳しくはお問い合わせください。

4:暗号資産に該当する可能性

サービス内でNFTを独自に発行したり、ゲーム内アイテムをNFT化したりして、ゲーム内外での売買がある場合、暗号資産に該当し資金決済法の対象となる可能性があります。暗号資産には1号資と2号の2種類があり、要件①~③をすべて満たすものが1号暗号資産(例:イーサリアム,ビットコイン等)、 不特定の者との間で、1号暗号資産と相互に交換できるもの で、②と③を満たすものが2号資産とされています。

暗号資産の要件(資金決済法2条5項)
① 物品・役務提供の代価の弁済として不特定の者に対して使用でき、かつ、不特定の者との間で購入・売却をすることができること
② 電子的に記録された財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができること
③ 本邦通貨、外国通貨および通貨建資産に該当しないこと

これらの該当性の判断について、金融庁の回答は以下です。

・ゲーム内での固有トークン発行:個別具体的に判断が必要。
・ブロックチェーンに記録されたトレーディングカードやゲーム内アイテム等:基本的には1号仮想通貨のような決済手段等の経済的機能を有していない
と考えられますので、2号仮想通貨には該当しない。

(令和元年9月3日報道発表資料「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果について別紙1:No1,No4の金融庁の考え方を一部引用・編集)※資金決済法の改正(令和2年5月1日施行)により、法令上、「仮想通貨」は「暗号資産」へ呼称変更されています。

このような回答があるものの、サービス内容によっては、NFT化されたアイテムが暗号通貨要件① と同等の決済手段としての機能がある場合、暗号資産と判断される可能性もあります。
サービス内容と、その実施に係る必要手続きの負荷を考慮し、慎重に検討してください。

参考:資金決済法該当する場合の対応例

NFTを用いたサービスが「暗号資産」に該当した場合、金融機関と同じような組織体制が要求される「暗号資産交換業の登録」が必要となります。登録が無く暗号資産登録業に該当する行為行った場合は、懲役刑若しくは罰金などを受ける可能性があります(資金決済法第107条、第115条)。
また、金銭の移動を行う依頼を受け、遂行する場合には、為替取引を行っていると判断され、「資金移動業者の登録」が必要となる場合があります。
詳しくは、金融庁, 事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係, 16.暗号資産交換業者関係 や専門家にご確認ください。

さいごに

今回は、NFTサービスを提供する際に考慮すべき観点4つについて解説しました。海外で既に提供しているNFTサービスであっても、日本で展開する場合、法律の違いから、日本では法令違反となる場合もあります。サービス内容の検討に際しては、弁護士など専門家に相談しながらサービス検討を行ってください。

弊社では、NFTを活用したサービスのコンサルティング、開発サポートを提供しております。より詳しい情報については、こちらをご覧ください。

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