2013年11月18日
弊社がベトナムを拠点にオフショア開発を行う上で様々な苦労や体験を重ねて参りました。
日本のお客様とのコミュニケーションもそうですし、弊社の日本拠点とベトナム拠点の間のコミュニケーションもそうです。
今回はその中から一般的にも参考になる事例を5つ紹介したいと思います。
1. なんでスピード感が無いのか
ベトナムの開発チームは反応が遅く、納期が近づいても危機意識が感じられない、という感想を聞くことがあります。しかし、プロジェクト初期のごろに、仕様詰めやデザイン供給などで日本側がゆっくりすると、それほど急がなくても良いプロジェクトだとベトナム側が勘違いしてしまい、一緒にゆっくりしているのです。
また、ベトナム側からの質問に、数日または数週間をかけてやっと日本側が回答していたのに、プロジェクトの終わりになると、数十分単位でベトナム側に回答を要求するのはフェアではない、と現場からよく意見を聞くことがあります。
要するに、相手にスピード感が無いのは、自分がどこかで間違ったスピード感を与えてしまった可能生があります。
スピード感が求められるプロジェクトであれば、最初から互いにスピード感を持ってやりましょう。
2. 会議で決まったことなのに、なぜ会議の後にまだ反論するのか
お客様との会議で実装方法やスケジュールが決まった後、ベトナム側の担当者から再び調整の相談をする事がよくあります。決まった事を引っ返すようなこともしばしばあり、かなり困っていますが、「何で会議で言わなかったの?」と聞いたら、苦笑いの顔で返されました。
実はこの問題は、コミュニケーションの問題です。
担当者はその場で納得できない事があったとしても、流暢な日本語で理論的に反論することは困難です。言語に慣れていない部分もあり、ベトナムの教育で論理的に議論させる訓練を受けていない部分もあります。
「反論が無ければこれで決まり」という勢いではなく、キーマンとなる人達の表情をよく観察し、「君、何か言いたいことありますか?本当にこれで問題ないと思っていますか?』などでフォローすることが大切です。
3. 「○○アプリと同じく作ればいいから」という罠
アプリ開発ではモデルとなるアプリを元に開発を依頼されることがよくあります。
「○○アプリを真似する」という指示で、仕様書作成の手間を省略しようとするがよくあります。
但し、既存アプリの機能を全て開発することが予算的に、スケジュール的に現実でないため、後から「xxxを作らなくていいよ、yyyを追加してください」などの指示があります。
こうやって、アプリのイメージが断片的になり、誰も本当のアプリのイメージを正確に把握できず、プロジェクトが失敗することがよくあります。
モデルとなっているソフトがあるからと言って、それを容易に仕様書に引用してはいけません。あえて、誤解を招くことがあります。
博物館に、「この作品の人物は○○作品の人物と同じだと思ってください」という作品は無いでしょう。仕様書もそうです。他人のイメージを借りずに、自分のイメージをなるべく全て書き出しましょう。
4. 簡単な修正なのに、なんでそんなに時間かかるのか
文言修正や、簡単のロジック変更をベトナム側に依頼し、1−2時間で返ってくると思ったら、1日で返って来れず、イライラした経験があります。
実はこれ、開発者のスキルの問題ではなく、信頼関係の問題だと、後から分かりました。
機能の変更を行う場合、関連する様々な機能について影響を調査します。この時、ベトナムの担当者は、つたない日本語で質問するのですが、その質問に対して日本の担当者は丁寧に対応してくれなかったり、場合によっては怒るような口調や文章で対応されることもあります。
例えば、「そんなの、自分で考えてくださいよ!」、「それは、確認するまでも無いでしょう!」
などなどです。
そうするとベトナムの担当者は萎縮し、対応が必要以上に慎重になってさらに時間がかかってしまいます。
時々怒ることも大切ですが、互いに顔を見れない状態で仕事しているので、
「確認ありがとう。でも、それはあなたの判断で良いですよ。」
などのチームワーク意識の表現で、互いの信頼関係を築きましょう。
5. 日本側が自分で判断しようとし過ぎる
弊社が担当する業務に研究や実験、性能評価などがあります。
この時、よく以下のような状態がありました。
—
日本側:これをやってみてください。
ベトナム側(半日後):はい。結果はこれです。
日本側: うむむ。ちょっと違いますね。次はこのパラメータを変えてやってください。
。。。
—
このように、日本側が全てのデータを見て、判断し、指示を出します。しかし、ベトナムの担当者は、どのような判断基準で必要になるのかを知らされていないため、要求に合致したデータの提供に時間がかかる事があります。
この状態になったら、やりとりするのに時間がかかり、オフショアで作業を行う意味が無くなります。
ベトナムの担当者に対しても調査の主旨や判断基準を共有し、ベトナム側で自ら実験の設計、データを判断できるようにしましょう。